剱岳(前編)
今更ではあるが、この夏に行ってきた山歩きの話でも書こうと思う。
意外に思われるかも知れないが、私は学生時代から山を登り始め、若い頃はそれなりに色々な山に登っていた(※但し富士山を除く
)のである。リフトが掛かってなくてもテクニカルなコーナーの続く素敵な峠道が付いてなくても、山はもともと好きだったのだ。
きっかけは数ヶ月前に遡る。6月3日は「測量の日」という地味~な記念日だったのだが、国土地理院ではイベントを開催していて、地図や測量(主に昔の、であるけど)を勉強した。

昔は木で櫓(高覘標)を組んで、遠くから望遠鏡(測距儀)で覗いて方角を測るというかなり手間のかかる方法で測っていたのだ。歴史を紐解いてみると、伊能忠敬による江戸時代の測量事業から始まって、日本の近代化に欠かせなかった明治の測量は、国を挙げての大事業だったようだ。現代のレーザー測量やGPS測位、GoogleMapなどを彼らが見たら、どんなにか驚くことだろう。
そんな面倒な話は置いといても、国土地理院に展示されている床一面の大きい日本地図を見ながら、そういやここ行ったなーとかここって実はこんなに遠かった?とかなんでここはこんな形してるのかな?とか空想するだけで何だか楽しく、案外地図ってロマンだなぁと思ったりしたわけだ。村上春樹の「ノルウェイの森」に地図が唯一の趣味みたいな人が出てきて、みんな特攻隊長だかなんだか言って馬鹿にするくだりがあるのだが、なかなか侮れないものがあると思う。

こんな感じで明治の地図測量にすっかり魅せられている時に知ったのが、「劒岳・点の記」という映画だ。これは、日本地図の唯一の空白・北アルプス奥地を埋めるために剣岳山頂に決死で測量に行った測量技術者達の話である。ちなみに「点の記」とは測量の基準となる三角点を設置した経緯を淡々と事務的に記した書物のことだ。理系人間としては知の探求に命を掛けて挑んじゃうようなこういう話はすぐに涙腺が緩んでしまう。お国のため名誉のためじゃないのだ。地図を作る。その地図が助けになる人達がいる。そのために命を賭けると。

新田次郎の原作はもちろん読んだのだが、映画全編が特撮やCG、ヘリコプターからの空撮も一切なし、全て目線で実写撮影されたものだということもあり、にわか地図好きとしてはもちろんのこと、かつての山好きとしては絶対に見逃せないと思い、劇場に足を運んだのだ。地味な映画だしきっとお年寄りだらけだろうと思って躊躇もしたのだが、これは大スクリーンで見る価値のある映画だと思った。映画も良いが新田次郎原作の小説もお薦めだ。地図や三角点についての観方が変わること請け合いである。
で、淡々と大スクリーンに映し出される美しい北アルプスの山々を見ていたら、10数年振りに山に行きたいなぁ、テン泊で縦走とか良いだろうなぁとは思ったのだが、ずっと気になりつつも仕事が忙しかったこともありそのままになっていた。今年の夏は天気も悪かったし。しかしお盆休みのさなか、ちょうど好天が続く予報が出されたのをきっかけに、ふっと思いついて北アルプスに向けてクルマを走らせていた・・・好天吉日。登るなら今しかない。
とまぁそんな前置きを書いているうちに長くなってしまったので、山の様子は後編で。
| 固定リンク











コメント
こんにちは。
遊馬道のメモ帳のyumamitiと申します。
トラックバックありがとうございます。
国土地理院のホームページにある「しごとツアー」のGPS測量の剱岳山頂とか三角点とか興味深いです。
映画では、いろいろな登山ルートとクッキーのやりとりをするところが面白いと思いました。
後半をエントリされたらそちらもTBいただけると嬉しいです。
投稿: yumamiti | 2009/09/06 00:13
なんとのりっくさんは、登山家でもいらしたんですね。この映画、残念ながら見逃してしまったんですよね。早くDVDが出ないかなと心待ちにしている作品です。
のりっくさんの涙を誘う作品、楽しみです!!
投稿: as | 2009/09/07 19:58
>yumamitiさん
突然のTBにも係らず紹介まで書いていただいて有難うございました。記事にも書かれていましたが、ひとつひとつ仕事を着実に進めていく姿が良いですね。淡々と進んでいく物語もそんな姿を際立たせていると思います。クッキーのくだりは原作には無いんですが、対照的な境遇を上手く表しています。映画で出てきたルートは、現在では(初登頂ルートを除き)どれも登山道として整備されています。ぜひ地図を見ながら原作を読んでいただくと面白いと思います。
>asさん
いつもコメント有難うございます。
登山家というほどではないですが・・・山歩きなんて年配の人の趣味みたいですよね
でも山は技量や趣味によって雪渓滑り、岩場登り、湿原散策、花畑巡りと色々な楽しみ方が出来るし、何より日常から完全に切り離されるのが良いです。ネットも携帯もないところで黙々と歩くだけというのが良いです、(最近は携帯はかなり通じてしまうのですけど)
投稿: のりっく | 2009/09/10 02:23